そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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想えども想えども 後編
2007-06-11 Mon 08:01

 
空の色が白から黒に段々と変わってくる。
普通の土地であれば辺り一面が朱色に染まる時間帯だが、この街に限ってはグレーに埋まるのだ。

勇気:
……


学校から帰っていた勇気は、何もせずただぼーっと舞い落ちる雪を眺めていた。

(じゃあね、バイバイ。)

涙をこぼしながら気丈に笑顔を見せていた優希。

勇気:
姉貴……くそっ。


忌々しげに舌打ちする勇気。
だがそれは、自身に向けられたものだった。
 


 
結局あの後、優希は休み時間になる度に教室を出て姿を晦まして、放課後も気付けば居なくなっていた。
そのせいで勇気に弁明する余地はなかったのだ。

そして今も、家に帰ってくる気配はない。

勇気:
どこ…ほっつき歩いてんだよ…


つぶやく勇気の目は真っ赤に充血し、まぶたも腫らしていた。

すると、

友野:
勇気くん!優希ちゃんが居なくなったって本当かい!?


お隣さんの友野が駆け込んできた。
勇気はその姿を横目で見ると、すぐに視線を外して答える。

勇気:
ああ…


友野:
ああって…優希ちゃんの事心配じゃないのかい?


勇気:
そんな訳無ぇだろ!適当な事言ってんじゃねぇ!!


それは、勇気が他人に見せる事が殆ど無かった「感情」だった。

友野:
そうだね。僕はキミの考えてる事は分かり得ない。
だからこそ、キミにしか優希ちゃんの事を分かってあげられないんだと思うよ。


勇気:
……


友野:
今まで二人で歩んできたんだろう?それなら…


勇気:
うっせぇ…黙ってろ。


言われて、友野は沈黙せざるを得なかった。
 
 
耳に痛いほどの静寂。
それを破ったのは、勇気の方だった。

勇気:
俺がいけないんだ…姉ちゃんの気持ちも考えねぇで…


友野:
??


勇気:
登校初日で周りは知らん連中だらけ、唯一分かる俺を頼ってきてた。
それを、あんな風に…っ!


木製のテーブルを、ひびが入るのではと思うほど殴りつける勇気。
再び振り上げられる腕を、友野はがっしりと受け止めていた。

友野:
キミだけが悪いんじゃない。
それが証拠に優希ちゃんは帰って来ないだろう?


勇気:
……


友野:
キミの事を想うからこそ、迷惑を掛けたくないと考えるからこそ、キミとの距離を置こうとしているんじゃないかな?


勇気:
っ!!


友野:
さあ、行ってあげようじゃないか。優希ちゃんはきっと待ってるよ。


勇気:
行くって…ぁ。


先程までの生気の抜けた顔に、力が蘇って来る。
そして、普段では考えられない程の猛スピードで駆け出していた。

勇気:
ちょっと行ってくる!!留守番頼みます!!


その後姿を見送りながら、友野はため息混じりに言うのだった。

友野:
やれやれ…青春だねぇ…

 
 
その頃。

優希:
…ぐす……ひっく……


優希は膝を抱えてうずくまっていた。
涙はすでに枯れて久しく、しゃくりあげるのが精一杯だ。

優希:
勇気……ゆうきぃ……


頼るべき相手の名前を呼ぶが、来るはずもなかった。

辺りを支配する無音が、夜の帳の下りてきた景色と相まって恐怖すら与える。
それは孤独感を募らせる優希にとって、これ以上無いほどの不安感をもたらす物だった。

すると、

――ギュ、ギュ、ギュ、ギュ…

雪を踏みしめる音が遠くの方から聞こえてきた。

優希:
ひ…っ!!


小さな悲鳴をあげて顔を腿に埋め、脚をさらに強く抱き寄せる。

しかしその音は徐々に優希の方へと近づいてくる。
そして、最後の一歩が目の前で止まった。

次の瞬間、肩に温かなものが掛かる。

優希:
ぇ……?


手にとって見ると、それは真新しい男子用制服の上着だった。
恐る恐る上を見上げると、

勇気:
あーあー、こんなに冷やしちまって…


そこには、待ち望んでいた姿があった。

優希:
勇気ぃ!


思わず抱きついていた。

勇気:
ったく、あんま心配させんなよな…


優希:
ごめんなさい…ごめんなさぁい…


むせび泣く優希の頭をそっと撫でながら、勇気は言う。

勇気:
俺の方こそ…悪かった。
姉貴の気持ちも考えねぇで…


優希:
ううん、そんな事ない…だって今、勇気はここに居てくれてるもん。


勇気:
当たり前だろ…俺たち、姉弟なんだからな。


恥ずかしそうに言う勇気をさらに強く抱きしめながら、優希は言うのだった。

優希:
うん、そうだね…


触れ合う温もりが、凍りかけていた二人のココロを解いた瞬間だった。
 
 
翌朝。

優希:
勇気ぃ~、待ってよぉ~~


後からやってきた優希が、勇気の腕にしがみつく。

勇気:
おっと…ったく、この甘えん坊。


優希:
いいんだも~ん、お姉ちゃんの特権だもん♪


二人の笑顔は、雪雲に負けない太陽のように晴れ晴れとしていた。
 
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