そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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蛍雪の絆
2007-07-06 Fri 08:09

優希:
けほっ、けほっ…


勇気:
ほら姉貴、咳はできるだけ我慢する。
そーじゃないと治ってもクセが残るぞ。


優希:
そ、そうは言っても…けほんっ!


勇気:
ほれ見ろ言わんこっちゃない。


大きなベッドに横たわるのはパジャマ姿の優希。
そして看病のために水で冷やしたタオルを持つ勇気。

もはや二人にとってはいつもの光景だった。
 


勇気:
ノド乾いただろ、何か持ってくる。


優希:
う、うん…ごめ…けほっ、ごめんね…


勇気:
いいから大人しくしてろって。


そう言うと、勇気は寝室を出て行った。

元々病気がちな優希が、ここ数日本格的な風邪に見舞われていた。
原因は…いわずもがなこの街特有の寒さ。
夏場は各都市向けに雪を数十トン単位で売りに出すと言うのだから、その寒さは想像に難くないだろう。

ほんの数週間前まで普通の街にいた優希にとって、この寒さはまさに命取りなのだった。

優希:
うぅ…ノド痛いょぅ…


常夜灯の、橙色の灯りが照らす室内を見回す。

優希:
学校、行きたかったなぁ…


机の上を見てみると、勇気が持ってきたプリントやらノートの写しやらが置いてあった。
そして壁のハンガーには、着るはずだった制服が掛かっている。

優希:
(私…また勇気に迷惑かけてる…)


いつもそうだった。

酷い病気に掛かってしまっても、軽い風邪のときでも、必ず勇気が傍に居た。

優希:
ごめんね、勇気…


何度言ったか分からない。

一度だけ面と向かって言ったことがあった。

そのときですら勇気は 「姉貴が気にする事じゃない」 と、いつものすました顔で答えるだけだった。

優希:
弱いお姉ちゃんで…ごめんね……っ


勇気:
ま~~たそんな事言ってんのか。


優希:
!!


顔を上げると、そこにはマグカップを持った勇気の姿があった。
サイドテーブルにそれを置きながら、勇気が言う。

勇気:
人なんてモノはな、どっかしら弱い部分があるもんだ。
ましてや姉貴は女じゃねぇか、あって当たり前だ。


優希:
でも…いつもいつも病気ばっかりで…


言いかける優希の言葉を遮るように、勇気が言葉を割り込ませる。

勇気:
だから何だ?
病気になったら治せばいい。
身体が痛ぇなら休めばいい。
何も慌てる事なんかないんだぞ。


言葉に、怒気が籠められていた。

優希がこんなに怒る勇気を見るのは数年ぶりだった。

あくまで静かに、怒っていても自分を気遣ってくれる。
その優しさが胸に沁みて…

優希:
…ぅっ…ぐすっ……ぇぅ……


こぼれ落ちた雫は、布団の裾に小さなシミを残す。

すると、


――ふわぁっ…


優希:
ぇ……


勇気:
不安なら俺に言えよ。幾らでも聞いてやるから。


肩越しに聞こえる、勇気の声。
息遣いさえ聞こえるほどの近さ。
双肩にわずかに掛かる、重みと温かさ。

優希は肩を抱くがっしりとした腕を抱き寄せながら答えた。

優希:
うん…


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