そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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ささめ雪の降る頃に(中編)
2007-08-17 Fri 12:52

夜半に目が覚めた勇気は、考えていた。

勇気:
(仮にOKしたとして、俺たちに何出来る?)


ひたすら思案するが中々いいアイデアは浮かんで来ない。

勇気:
(そもそもアイツは家族じゃない…そこをどう埋めるんだ?)


自問はすれど自答できず身悶えする。

ふと隣を見る。

いつもなら幸せそうな顔で寝入る優希が居るのだが、今日は居ない。

勇気:
(ま、朝起きてからだな…)


何だかやる気を削がれた勇気は毛布を被り、再び夢の中に旅立つのだった。



勇気:
ん……いけね、もう昼か…


むくりと起き上がって隣を見るが、案の定優希の姿は無かった。

親友が泊まり掛けで遊びに来ているのだから、当然と言えば当然なのだが。

すると、階下からにぎやかな声が聞こえてくる。

優希:
わわ、ささらちゃん包丁の使い方上手だねぇ~


ささら:
そんな事はありませんよ?
姉妹の中では下手な方ですから


優希:
ほぇぇ…


どうやら昼ご飯の支度をしている最中のようだ。

これ幸いにと、勇気は手早く顔を洗うとリビングに下りて行った。

勇気:
おはよーさん


優希:
あ、勇気起きたんだぁ、おはよぉ~


ささら:
おはようございます、ゆうさん


全然お早くない。
マンガや小説であれば壮絶なツッコミが来てもおかしくない状況であるにも関わらず、普通の反応が返ってくる。

しかしそれは、何か感情を押し殺しているようにも見えた。

勇気:
ま、とりあえずメシできるまでのんびりしてるから


ささら:
わかりました~


優希:
ささらちゃんが一緒に作ってくれてるから、きっとおいしいよぉ


ささら:
ゆ、ゆきちゃん…


照れて顔を赤くするささらに抱きつくようにして、優希が続ける。

優希:
お味噌汁におひたしにブリ照りに煮物に…とにかくすごいんだよぉ~


ささら:
そ、そんな事ありませんよ…ゆきちゃんが一緒だから…


優希:
そんなことないよぉ
ささらちゃんのお料理全部丁寧で綺麗だもん


勇気:
とりあえず、二人ともその辺にしとけ
止まらなくなるぞ


ささら:
そうですね…ご忠言ありがとうございます


勇気:
んじゃ、期待して待ってっからな


ささら:
っ!!
もぅ…ゆうさんのイジワル…

 
 
 
拗ねたような表情を見せるささらを置いて、勇気はさっさとリビングに逃げてきた。

そして何気なくテレビのリモコンに手を伸ばし、電源ボタンを押す。

すると、

――昨日から中学生の少女が行方不明になっています

昼前定時のニュース番組が不穏な事を言う。

勇気:
(…最近ロリコンオヤジとか増えてるからなぁ)


しかし、現場周辺の映像は見たことのある風景だ。

そして少女の写真が映し出された時、

勇気:
ぶっ!!


思わず噴き出してしまった。

――行方不明になっているのは、麻績ささらさん、15歳…

行方不明どころか、今現在、我が家の台所で親友で幼馴染の姉と昼ご飯の準備をしている。

早速合点のいった勇気は台所に向かおうとした。

だが、その足を止めた。

勇気:
(今そんな話したら、ややこしい事になるだけだな)


勇気はつけたばかりのテレビを消し、ソファーに身体を投げ出した。

勇気:
(理解できん…何で親に言って来なかったんだ?)


天井をぼんやりと眺めながらぽつりと呟く。

勇気:
ま、それとなく聞いてみるか…


優希:
ほぇ?
何を聞くの??


勇気:
って、姉貴!
いつからそこに居たんだ?!


優希:
今来たところだよ?
えっとね、お昼ご飯できたから一緒に食べようよぉ


無邪気な笑顔で言う優希。

もしさっきのニュースを優希が見ていたら、どういう反応を見せたのだろうか。

そう思うと居ても立ってもいられなかった。

勇気:
なあ、姉貴


優希:
ほぇ?なぁに?


勇気:
仮に…仮にだ
ささらが家出してここに来てるんだとしたら、どうする?


優希:
ささらちゃんが…家出…?


実感の湧かない質問に、戸惑う優希。

しかし、意外にも答えはすぐに返ってきた。

優希:
仕方ないんじゃないかなぁ…


勇気:
何でだ?


優希:
ささらちゃんは疲れちゃったんだよ、きっと
だから、そっとしておいてあげた方が良いと思うなぁ


勇気:
……意味が分からん…


優希:
えっとね…うまく言葉に出来ないけど…
勇気も私も、今のささらちゃんと同じ事をされたよね?
だけど、私には勇気が居て、勇気には私が居たから何とかなったんだと思うの


優希:
でも、ささらちゃんはひとりぼっちだから…
一人であんな痛みを受け続けたら、ものすごく大変だよ


勇気:
なるほどな…


優希:
それで、頼れる…というか分かってくれると思った私たちの所に来たんだと思うの


勇気:
それでか、昨日姉貴があんな怒ったのは…


優希:
(こくん)


勇気:
ふむ…


優希:
ささらちゃんがあんなに寂しそうな顔をするの、私初めて見たよ
さっき勇気は「仮に」って言ってたけど、私は本当に家出してきちゃったんだと思うの…


勇気:
…理由は?


優希:
みんなが思うほど、ささらちゃんは強い子じゃない…って言う事かな…


勇気:
……


優希:
優等生で、綺麗で、優しくて…でもそれは、あくまで見た目だけ…
本当はささらちゃんだって甘えたいんだよ
ワガママだって言いたいはずだし、勉強だって時にはサボりたいんだと思うの


勇気:
そう、か…

 
 
 
勇気:
それで、姉貴はどうするつもりなんだ?


勇気の問いに、優希はまたしてもほとんど考えることなく言った。

優希:
ささらちゃんの「居場所」になってあげたい
落ち着くまで、ここに居させてあげたい…


勇気:
だけどな…


勇気が言いかけたその時、

ささら:
ゆきちゃん、ゆうさん起きて…
あらら、今起きられたのですね?


リビングのドアが開いて、エプロン姿のささらが現れた。

勇気:
お、おぅ
悪いな、暇だったからウトウトしてた


ささら:
ゆうさんらしいですね
さあ、早くしないと冷めてしまいますから…


勇気:
ん、そだな


優希:
わぁ~い、ごはんごはん~♪


満面の笑みを浮かべ、バンザイして先を行く優希。

勇気:
(姉貴…無理しやがって…)


渋い顔のまま、その後を追う勇気だった。
 
 
 
これ以上無いほどの豪華な昼ご飯の後。

すっかりうたた寝モード突入の優希をベッドに寝かしつけた勇気は、リビングに居た。

そしてソファーには、女の子らしくファッション雑誌を読みふけるささらの姿があった。

勇気:
ささら、何か飲むか?


ささら:
あ、いえ、大丈夫ですよ
ありがとうございます


勇気:
そうか…


そう言ってささらの正面に陣取る。

どっかりと座り込んだ勇気を、不思議そうに見るささら。

ささら:
もしかして、お暇ですか?


勇気:
いや…そうじゃないんだ


ささら:
…私、やっぱりご迷惑ですか…?


勇気:
それこそありえん
そんな事より…


ささら:
はい…


勇気:
大体は見当は付いてるみたいだから詳しく言わんが…
何で俺たちの所に来たんだ?


ささら:
それは…


勇気:
別に問い詰めたい訳じゃないから安心してくれ
俺たちが頼られているのかを確認したかったんだ


ささら:
…私には、もう行き場がありません
お二人しか、私を分かってくれないのです


勇気:
……


ささら:
友達にも、先生にも、両親にも相談はしました
でも、誰も救いの手を差し伸べてはくれませんでした
それどころか…逆に私を忌み嫌うように…


勇気:
そう、だったのか…


暫しの沈黙。

外は相変わらずの雪が降り、積もる微かな音だけが支配した。

その沈黙に、先に耐えられなくなったのは、意外にも勇気だった。

勇気:
姉貴も、しばらくここに居て良いって言ってる


ささら:
え…


勇気:
俺もそれで構わないと思ってる
ささらの気の済むまで、泊まっていけよ


ささら:
でも…


勇気:
さっきニュースで見た
多くは語らんで良い


その言葉に、ささらは、

ささら:
ありがとう、ございます…


大粒の涙と共に答えるのだった。


to be continued...

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