そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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光の導く先、風の辿り着く場所 1
2007-11-13 Tue 01:39

土曜日の朝。

――チュンチュン、チチチチ…

小鳥たちの囀りがこだまする、抜けるような青空。

何日かぶりの柔らかな日差しがまぶたをくすぐり、優希は目を覚ます。

優希:
ふにゅ……ふぁぁぁ…朝かぁ~……


寝ぼけたまま、眩しそうに手のひらで顔を覆う。

そしていつものように隣で寝る勇気の腕にしがみつき、二度寝を決め込んだ。


しかし、

優希:
……あれ?


抱きつこうとした華奢な腕は、布団の中でもがいただけだった。
隣に居るはずの勇気の姿がない。

刹那、いつかの悪い思い出が蘇る。
当時小学生だった勇気が何を思ったのか外に出て、あわや事故という所を近所のおじさんに助けてもらっていた。

優希:
ゆ、勇気だってもう中学生だもんね…そんな心配、要らないよね…


速くなる鼓動を抑えつつ、ゆっくりと起き上がりながら呟く。

そして半纏(はんてん)を羽織りダイニングへと下りていくと、

優希:
あれ…?
ドアが開きっぱなし…


普段の勇気なら、「熱が逃げる」とぼやきながらきちんと閉めているはずだ。
それが開ききる手前程度に開け放たれている。

嫌な予感がますます膨張していく。

半ば駆け足で室内に飛び込む優希。
そこにはたたみ掛けの洗濯物が整理されて置かれており、暖炉の火も灯ったままになっていた。

優希:
ねぇ…勇気…?


恐る恐る声を掛けるが、当然のごとく返事はない。

予感は、不安に変わる。

優希:
じょ、冗談…だよね…や、やだなぁ勇気ったら…お姉ちゃんを脅かそうとしてるんでしょ?


震える声でどうにか平静を保とうとする優希。

ゆっくりと部屋を見渡す。
すると、テーブルの上にメモが置いてあるのが目に入った。

優希:
な、なんだろう…


そっと手に取ると、そこには雑誌や新聞の切り抜きで1文字ずつ貼り並べた手紙になっていた。

「 君 の 弟 は 預 か っ た 。 返 し て 欲 し く ば 問 い に 答 え よ 。 」

優希:
…っ!


慌てて手紙を裏返すと、パソコンから印刷したらしい文字でこう書かれていた。

「問題:
■■で■■■い■■■■ば■■■■■■■■■■い■■■■■■こ?」

問題文らしい文字の大半が黒塗りになってしまっており、答えるどころか読み下す事すら不可能な代物だった。

優希:
こ、こんなの…分からないよぉ…っ


不安が恐怖に変わった瞬間、とうとう優希は泣き出してしまった。

優希:
誰か…誰か助けて……助けてぇ……


すると、

――ガチャッ

玄関のドアが開く音と共に、聞きなれた声が聞こえてくる。

友野:
おはよう~~二人とも居るかな?


何も知らない様子の友野がやって来たのだ。

藁にもすがる思いで優希は玄関に駆け出す。

優希:
友野さん…っ


友野:
わ、優希ちゃん今日は元気がいい…


陽気に言う友野だったが、優希の瞳に光る雫に気付く。

友野:
優希ちゃん、何があったんだい?!


優希:
あのね…あのね……ぐすっ……これ……


涙で言葉を詰まらせながらも、優希は友野にメモを渡す。

友野:
これは…脅迫文じゃないか!
裏には問題文…愉快犯か…?


優希:
連れて、いかれちゃった…ばっかり、みたいなの…


友野:
そうか…それなら町長に頼んで警察の手配を…


優希:
待って!


言い掛けた友野の腕にしがみつくようにして優希が引きとめた。

友野:
な、何だい…?


優希:
連れて行かれたばっかりなら…そんなに遠くには行ってないって思うの…
だから…


優希の真剣な瞳が語るメッセージを、友野は読み取る。

友野:
分かった、追いかけよう
恐らくこの問題文は、犯人と勇気くんが向かっている場所を示しているだろうからね


優希:
あ、ありがとうございます!


友野:
ただ、町長…いや、伯父さんには伝えておいた方がいいだろう
一応連絡だけは入れておくよ?


優希:
は、はい…


頷くのを確認して、友野は優希にメモを渡して電話の元に向かった。

一方の優希は、心強い協力者が現れた事でようやく落ち着いたらしく、小さく息をつく。

そして、改めてメモを見直してみた。

「問題:
■■で■も■い■■■■ば■■■■■■■■■■い■■■■■■こ?」

優希:
あれ…?


先ほどまで見えていなかった文字がうっすらと見えてきていた。
その周りはススで汚れたような跡が残っている。

ふと自分の指を見てみると、

優希:
…汚れてる…?


同じように汚れが付着していた。

その時、優希の脳天に火花が散ったような衝撃が走る。

優希:
わ、分かったっ!


ダイニングテーブルに置いてある消しゴムつきの鉛筆を持ってきて、消しゴムで問題文をこする。

すると…

「問題:
■■で最も高い■■■■ば■■■ですが、■■■い山といえばどこ?」

優希:
キーワードが…増えた…っ!


友野:
どうしたんだい、大きな声を出して…ん!?


文字の増えた問題文に驚く友野だったが、それが優希の手柄だと知るのに時間は掛らなかった。

友野:
よく気付いたねぇ…


優希:
メモが教えてくれたんですよぉ


友野:
ふむ…なるほどねぇ


優希が指差す部分には、鉛筆の黒鉛によって友野の指紋がくっきりと残っていた。
 
 
 
友野:
とはいえ、これはまた難しい問題だなぁ…


優希:
ほぇ?そうですか?


きょとんとした顔で友野を見る優希。

優希:
ここに「ですが」って書いてあるじゃないですかぁ
前半に「最も高い」ってありますから、反対を答えればいいんじゃぁ…?


友野:
なんだか勇気くんみたいな推理だねぇ…


言ってしまってから「しまった」と気付く。

優希:
……


案の定、優希は俯いて黙り込んでしまった。

友野:
ご、ごめん…


優希:
いえ…私、頑張るって決めたんです
だから、これくらいでめげてちゃ、ダメなんです


諦めに似た苦笑いを浮かべて言う。

友野:
それはそれとして…この問題、他にも取りようはあるよ


優希:
え…


友野:
同じ高いで統一する場合もあるんだ
後半は山だとしても、前半は高い他の何かかも知れない…


もっともな事を指摘されて、考え込む優希。

友野:
どちらかに絞らないと…むむぅ……


時間がない、その思いが焦らせる。

友野:
どちらかに賭けて、出発してしまった方がいいか…


問い掛けると、そこには祈りを捧げるような姿勢で座る優希の姿があった。

友野:
優希ちゃん…何をやって…


心配そうな表情で語りかける友野は、そこで驚愕の風景を見ることになる。

友野:
こ、これは……?!


差し込む日光が見せた錯覚と言ってしまえばそれまでかもしれない。

だが、それでは説明が付かない造形が浮かび上がっていた。

跪き祈る優希の頭上に輝く光の輪、そして背中には一対の翼。

友野:
天使…


言葉が漏れた。

すると、

優希:
ふぅ…


息をついて、髪を掻き揚げる。

友野:
優希ちゃん…?


優希:
…あれ……あっ!!


どうにか名前を呼ぶ友野を余所に、驚嘆の声を上げる優希。

友野も駆け寄って優希の手元を覗き込む。

「問題:
■■で最も高い■■■■ば■■■ですが、最も低い山といえばどこ?」

友野:
嘘だろ…インクジェット印刷が剥げるって…


もはや常識の範囲を完全に逸脱している現象の連続に頭を抱える友野。

対照的に諸手を挙げて喜ぶ優希だった。

優希:
よかったですっ
これで行けばいい場所が分かりましたよぉ


友野の手を握りながら満面の笑みを浮かべる優希に気圧されるように、曖昧な笑顔を浮かべるしかなかった。

優希:
あとは、日本で一番低い山を探すだけですね~♪


友野:
え、ちょっとまって?
どこに日本って…


優希:
だって、世界で一番高いのは「エベレスト」じゃないですか~
3文字にならないですもんっ☆
日本なら富士山だから、ぴったりなんですよぉ


友野:
な、なるほど…


友野の返答を待たず、優希はパソコンの前に陣取る。

友野:
(僕も、少し落ち着くか…)


一生懸命キーボードと格闘するその後姿に、友野は苦笑いを浮かべながら自身を戒めるのだった。

優希:
あ、これかな?


友野:
何々…天保山?
大阪の臨海地区だなぁ


優希:
ほぇ…知ってるんですか?


友野:
すぐそばに大きな水族館があってね、そこに行った事があるんだ


優希:
そうなんですかぁ


友野:
よし、何はともあれ向かうべき場所が分かった
優希ちゃん、早速行こう!


優希:
はいっ!!


こうして優希の冒険の旅が始まるのだった。

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