そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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光の導く先、風の辿り着く場所 3
2007-11-13 Tue 01:39

友野の運転する車は高速道路を順調に走り、金沢市に差し掛かろうとしていた。

友野:
しっかし、これは相当な移動距離だ…


感嘆の声を上げる友野に、優希は答えない。

ただ次に待ち受ける出来事に備えていた。



すると、最寄のパーキングエリアに滑り込み、車を止める。

友野:
ちょっとトイレ行かせてね
米原からノンストップだったからそろそろヤバい…


夜半からずっと走り続けていたので疲労も来ているのだろう。

やや疲れの見える顔を向けた友野に、優希は極力優しい笑顔を見せながら答えた。

優希:
は~い、行ってらっしゃいです


律儀に返事を待っていた友野は、ドアを閉めるや否やダッシュで建物に駆け込んだ。
 
 
優希:
…ふぅ


エンジンも止まり、静かな車内にひとり取り残されると、途端に不安が襲ってくる。

優希:
…勇気…大丈夫かな……


すると、その問いに答えるかのように遠くから潮騒が聞こえた。

気になって車外に出てみるとフェンスの向こうに砂浜が広がっていて、目の前の建物の真ん中を貫くようにある階段を上れば見渡す事ができるようだ。

優希は迷う事無く階段を駆け上がった。

優希:
わぁ…


そこには180度広がる日本海があって、荒々しい波を浜に寄せていた。

振り返れば、遠くに望む山並みから朝日がちょうど顔を出し始める所だった。

そして強めの風が吹き付けて、長めの髪を澄み切った空気の中に散らす。

優希:
わっとと…びっくりしたぁ…


慌てて手すりにしがみつくと、改めて御来光を拝む。

優希:
きれい…


徐々に赤みが消えて、黄金色にその色を変えていく陽光をうっとりとした表情で見入る優希。

優希:
こんなにきれいな朝日見るの、久しぶりだなぁ…


1ヶ月のほとんどが曇りか雪の生活をしていた優希にとって、久々の朝焼けは感動すら覚えるものだった。

優希:
勇気も、この景色を見てるのかな…


つぶやく優希の頭が、そっとなでられる。

優希:
ほぇ…?


友野:
大丈夫さ
優希ちゃん自身が太鼓判を押していたんだから、ね


戻ってきていたらしい友野が、優希の傍らに来ていたのだ。

優希:
友野さん…もう平気なんですか?


友野:
ああ、もう大丈夫だよ
さっき冷た~い水で顔も洗ってきたしね


よくよく見れば、確かにシャキっとした感じがあった。

友野:
それよりも、優希ちゃんも少し休んだ方がいいね
昨晩一睡もしてないでしょう?
そんな事じゃあ、これから先は戦えないよ


優希:
わ、私は大丈夫ですよっ
ほら……


言いながら腕まくりをして二の腕に力を込める優希だったが、

優希:
きゃっ!


立ち眩みが襲い、再び手すりにしがみつく。

友野:
ほら、言わんこっちゃない
車に戻って休んでおきなさい


珍しく命令口調で…とはいえ優しく言う友野に、

優希:
…わかりました


素直に従う優希であった。
 
 
 
寝辛い車の座席であるにも拘らず座って間もなく眠りに付く優希を見届けて、友野は朝食を摂る事にした。

この徳光パーキングエリアは上下線が歩道橋で繋がっていて、どちらからも砂浜に下りられる。
いわゆる「ハイウェイオアシス」と呼ばれる施設だ。

豪勢な造りの上り線側に比べ、今居る下り線側は外見こそ見劣るものの展望喫茶スペース付きのスナックコーナーがある。

友野:
しかし…何なんだろうなぁ…
優希ちゃんもそうだし、妙なクイズもそうだし…


開店したばかりで全てが出来たてのかき揚げうどんをすすりながら唸る。

確かに、常識の範疇で考えれば有り得ない事の連続だ。

友野:
逆に考えれば…この状況が正常とも取れる…
優希ちゃんの特異な性質を知っている人物の仕業か…


熱々のうどんを食べているはずなのに、背筋に悪寒が走る。

友野:
このまま相手の手の内で踊らされていて良いのかすら疑わしいな


そう言ってどんぶりをあおり、空にする。

友野:
まあ考えても仕方ない、か
彼女を信じて進むしかない


そして席を立とうとした、その時、

???:
それはどうでしょうね


友野:
なに…?!


声のする方を見ると、帽子を目深に被った人物が一人。

友野:
君は…?


???:
貴方からすれば、上白瀬優希を翻弄する敵対者、と言う事になります


友野:
…今回の事件の仕掛け人と言う事か


持っていたどんぶりを置き、相手の様子を伺う友野。

???:
まあ似たようなものです
それにしても、あまり驚かないのですね


友野:
こういう局面は慣れているからね
キミこそ、外見の割には落ち着きがあるじゃないか


???:
お褒めに与り光栄です


口角が上向き、微笑んでいる様子を伝える。

友野:
まあそれはさておきだ
初対面の人間には名乗ってから話すものじゃないかい?


からかう様な友野の言葉に再びの微笑を浮かべ、その人物は言った。

亜緒衣:
これは失礼致しました
ボクの名前は、南牧村亜緒衣(みなみまきむらあおい)です
一応、女ですよ


帽子を取り、その中に押し込めていた髪を振り整えるその人は、スレンダーな体型だが確かに女の子の顔立ちをしていた。

友野:
それで、亜緒衣さんは今度は何を仕掛けるつもりで?


白々しくという形容が正しい態度で尋ねる友野に、亜緒衣は律儀に答えた。

亜緒衣:
貴方とボクで、すっかりお馴染みのクイズをさせて頂きます


友野:
…優希ちゃんではなく、僕と…かい?


亜緒衣:
その通りです


ほぼ同じ高さから友野を見据える瞳には、一点の曇りも無かった。

友野:
わかった…
ただ、僕は超常現象に付き合えるほどぶっ飛んではいないのでね
出来れば普通にやらせてくれないか?


亜緒衣:
それは承知しています
決着を付けるには、これを使用します


そう言って亜緒衣が取り出したのは、どこかで見たことのあるハットだった。

友野:
こ、これは…っ!
ウルトラハットじゃないか…!


ウルトラハットとは、かの有名なクイズ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」で使用されていた機械の事である。
早押しボタンをいち早く押した解答者が装着するハットのてっぺんに、最先着を示す札が挙がる仕組みだ。
現在では見た目を変えて、高校生クイズで使用されている。

亜緒衣:
さすが友野さん、ご名答です
これなら公平に勝負ができるでしょう


友野:
いいだろう、やろうじゃないか
場所は…ここでは目立つな…


亜緒衣:
ではこの上の展望台にしましょう
トラック運転手だらけのこのエリアで、展望台に上がってくる物好きは居ませんから


友野:
言うねぇ


亜緒衣:
お互い様ですよ


微笑を浮かべながら席を立つ亜緒衣の後を追って、友野も歩き出した。
 
 
 
展望台に上ってみるとそこにはテーブルがモニターに向かうように並べて配置されてあり、ウルトラハットも据え付けられていた。

申し合わせたような都合のよい展開に、友野は思わず苦笑いを浮かべる。

亜緒衣:
準備は宜しいでしょうか


意に介する事無く問う亜緒衣に、友野も平然と返す。

友野:
あぁ、構わないよ


亜緒衣:
問題文はそちらのモニターに表示されます
読み上げでない事はご容赦下さい


友野:
まるで……


そこで気付く。

友野はこの状況にそっくりな場所に思い当たる節があった。

亜緒衣:
まるで、何でしょうか


友野:
いや、何でもないよ


問い掛ける亜緒衣を軽くあしらい、友野は言った。

友野:
さあ、始めようじゃないか
決勝行きのチケットを掛けてね…


亜緒衣:
そうですね
では、始めましょう


亜緒衣がリモコンのボタンを押し、いよいよ決戦の火蓋が切って落とされた。


――40ポイント、先取制!

アナウンスの直後、問題文が表示され始める。

---------------------------------------------
第1問:
旧型電車の形式文字で「ク」と
---------------------------------------------

亜緒衣:
せいっ


先に早押しボタンを押したのは、亜緒衣だった。

亜緒衣:
…中間電動車


――ブーーー! 解答権移動!

亜緒衣が間違えると同時に亜緒衣サイドに「-10pts」の文字が点灯し、問題文が全文表示されていた。

---------------------------------------------
第1問:
旧型電車の形式文字で「ク」と言えば「制御車」ですが、「ハ」と言えば?
---------------------------------------------

友野:
普通座席車


――ピンポーン!

正解音と共に、友野サイドに「10pts」の文字が点灯した。

---------------------------------------------
第2問:
食品の「消費期限」とは、何日以内で
---------------------------------------------

友野:
はいっ


動作はほぼ同時だったが、札が挙がったのは友野のほうだった。

友野:
5日!


――ピンポーン!

亜緒衣:
やりますね


友野:
まぁね


軽い言葉の応酬の直後、すぐに次の問題が表示され始めていた。

---------------------------------------------
第3問:
自動車の排気量
---------------------------------------------

亜緒衣:
はっ


余りの速さに思わず隣を見る友野。

それには目もくれず、亜緒衣は答えた。

亜緒衣:
cc(シーシー)


――ブーーー! 解答権移動!

亜緒衣:
なっ…


自信を持って答えていただけに、大きくうろたえる亜緒衣。

---------------------------------------------
第3問:
自動車の排気量、小数点をつけて表すときにはどんな単位を使う?
---------------------------------------------

友野:
リットルでしょう


冷静に答える友野に、

――ピンポーン! リーチ!!

画面表示は派手な演出が施される。

得点表示は友野が30ポイント、亜緒衣がマイナス20ポイントとなっていた。

亜緒衣:
このままでは終わりませんよ…


呟く亜緒衣。

そしてその通りの展開となった。

第4問を電光石火の早業でもぎ取り、以降4問連取で30対30の同点に持ち込んだのだった。

――ピンポーン! 追っかけリーチ!!

友野:
くっ…


うめく友野を尻目に余裕も見え始めた亜緒衣であった。

そんな場の空気は見向きもせず、モニターは運命を決める問題を出題し始める。

---------------------------------------------
第9問:
物体を立体的に表現す
---------------------------------------------

亜緒衣:
はっ!


友野:
ちぃっ


完全に、ほぼ同時だった。

しかし無情にも札は亜緒衣側が挙がる。

すぐさま考え込む。

ストップウォッチの音と共にタイムアップが迫る。

亜緒衣:
……パース


渇ききったノドをさらに枯らした様な声で答える亜緒衣。


――ブーーー! 解答権移動!


がっくりとうな垂れる亜緒衣に、さらにマイナスポイントが覆い被さる。

続けざまに、モニターには問題文が全文表示された。

---------------------------------------------
第9問:
物体を立体的に表現する方法である「パース」。1点、2点と表されますが、この「点」とは何の事?
---------------------------------------------

友野:
消失点っ!!


自然と、声にエコーが掛ったように響いた。

ほんの一瞬の出来事であったが、その場に居た二人には十数秒にも感じられた。


そして…


――ピンポンピンポーン!! 勝者決定!!

友野の勝利を告げる音声が高らかに響き渡った。
 
 
 
亜緒衣:
さすが…ですね…


テーブルに突っ伏し顔を上げないまま、亜緒衣が言う。

友野:
亜緒衣さんこそよく頑張ったじゃないか、オンラインクイズの覇者さん


亜緒衣:
本名しか名乗ってないのに、よく分かりましたね


友野:
噂はかねがね伺っているよ
まさか5連続ポイント取られるとは思わなかった…


亜緒衣:
そこは、ゲーセン族代表の意地というものです
…結局、リアルの戦いを知る人には敵わなかった訳ですが


そう言ってようやく上体を起こした亜緒衣に、友野は手を差し伸べる。

友野:
まあ、いい勝負だったよ
今度はこんな状況下ではない所で戦いたいね


亜緒衣:
そうですね……っ?!


握手のために伸ばされた少女の細腕は、

――ガタンッ

空を切りテーブルに落ちた。

友野:
なっ?!亜緒衣さん?!


目を大きく見開いたままピクリとも動こうとしない亜緒衣を前にして立ち尽くす友野。

すると、

――ピロロロロロッ、ピロロロロロッ

友野の携帯が鳴り始めた。

友野:
はい、友野ですが


???:
トモノサン、デスネ?


何とも形容し難い、機械音を無理に人間の声にしたような音が聞こえてくる。

友野:
…どちら様でしょうか


???:
フフフ、ソンナコワイコエヲダサナイデクダサイ


友野:
見当は付いているんだ、そんな声にもなるさ…
今回の事件の主犯だな?


???:
ゴメイトウデス
コレカラワタシノシテイスルバショマデ、イドウシテイタダキマス


友野:
ああ分かった従おうじゃないか
それよりもだ…


???:
ミナミマキムラサンハ、アトスウフンデゲンジツセカイニモドリマスノデ、ゴシンパイナク


友野:
現実、世界…だと…?


???:
アナタト、ユウキサンノイルソノバショハ、ゲンジツデアッテゲンジツデナイ
” ユメ ” ノセカイトデモヒョウゲンスルノガテキトウデショウ


友野:
どこかで聞いたことがあるな…
全くの他人同士が夢を共有する事がある、と…


???:
ソノリカイデ、ホボマチガイアリマセン


友野:
…分かった


本当は理解に苦しむ内容だらけだった。

現実世界にありえるはずが無い。

しかし、目の前で実際に起こる出来事を、嘘とは言えなかった。

???:
ゴリカイイタダケタトコロデ、イキサキヲシテイシマス
カンエツジドウシャドウ、ノボリセン、ツチタルぱーきんぐえりあニキテクダサイ


友野:
そこで、決着を付けると言う事か


???:
ソノトオリデス


友野:
…夢ならこう、ぱぱーっと移動できたりしないのか?


???:
イドウモボウケンノウチ、デスヨ


友野:
あーそーですか…


ちなみに、現在位置の徳光パーキングエリアから土樽パーキングエリアまでは、ゆうに300kmを越える距離だ。

???:
デハオマチシテオリマス
クレグレモ、アンゼンウンテンデ


友野:
君こそ…逃げるなよ?


???:
ネゴトハ、ネテカライウモノデス


そのセリフと共に、通話は途絶えた。
 
 
 
友野:
ついに追い詰めたか…


展望台から眼下を見下ろすと、すっかり昇ってしまった太陽に照らされる自分の車があった。

車内も照らし出され、中で眠る優希の姿も見て取れた。

友野:
あとは、優希ちゃん次第…かな


そう言って、友野は数ヶ月に1本しか吸わない煙草に火をつけ、紫煙を燻らせるのであった。

Go to the Final Stage ...

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