そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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光の導く先、風の辿り着く場所 4
2007-11-13 Tue 01:39

道中は快晴で、見渡す景色はどこまでも澄み切っていた。

まるで、これから訪れる苦難も労せず退けられるかのようだった。

途中の休息ではサービスエリアと呼ばれる場所には全て止まって、楽しい時間を過ごした。

全ては、決着の後を笑顔で迎えるために…



友野:
ここを出たら、いよいよ勝負になる…
準備はいいかな?


土樽パーキングエリアの1つ手前になる休憩ポイントである、塩沢石打サービスエリアで友野は最後の確認をした。

優希:
私は大丈夫ですよ~
…友野さんは、大丈夫ですか?


友野:
僕はこの通り、大丈夫だよ


敬礼に似たモーションで元気である事をアピールする友野に、笑みを浮かべる優希。

友野:
まあ今から息巻いても仕方ないし、うまい物でも探しに行こうか


優希:
あ、待ってくださいよぉ~っ


さっさと車を降りる友野を追って、優希は後を追うのだった。
 
 
友野:
な、なんだこりゃ…?!


優希:
お、おっきぃ…ですねぇ…


思わず口元を押さえて驚きを表現する優希。

二人の目の前には、ありえない大きさのキノコが袋詰めされて置いてあった。

あまりにも立派な出で立ちに、他の客も驚愕の声を上げている。

優希:
あ、これって食べられるんですねぇ…
お家に持って帰ったら勇気に作ってもらって…


言いかけて言葉を止める。

しかし沈んだ表情も一瞬で消え、セリフを続けた。

優希:
勇気に作ってもらって、おそばを食べたいなぁ…
あったかいつゆに冷たい麺って美味しいんですよねぇ


友野:
優希ちゃん…


優希:
あ、その時は友野さんも来てくださいね?
今回の事、いっぱいお礼しないといけませんからねぇ


表情は笑顔だった。

代わりに目の端に今にもあふれそうな雫が、張力でどうにか堪えていた。

友野:
ああ……そうさせてもらおうかな
手打ちのそばなんて久しく食べてないから、今から楽しみだよ


友野は知らん振りを決め込んだ。

おそらくそれが、心を痛める少女に一番必要な気遣いであろうから。
 
 
 
そして、優希が小遣いでキノコを買って出てくるのを待って、友野はエンジンを掛ける。

目指す場所は、すぐそこに迫っていた。
 
 
 
湯沢インターチェンジが近付く案内が出る頃、同時に黄色い看板も出されていた。

「この先 関越トンネル 危険物積載車輌 ここで降りよ」

優希:
関越トンネル…?


初めて聞く名前に首を傾げる優希に、すかさず友野が解説する。

友野:
群馬と新潟を結ぶトンネルで、高速道路にあるトンネルの中でも一番長いんだ
何と、11キロもあるんだよ


優希:
ほぇぇ…


友野:
土樽パーキングエリアはその目前にある
本来は冬場にチェーンの着脱をするために使われるんだけどね…


優希:
つまり……


友野:
…今の時期、人が入る事は殆ど無いと言っていいだろう


優希:
そこが…決戦の地…
そこに勇気も居る…っ!


友野:
うむ…


もはや、恐れというものは消え失せていた。

眼前に広がる越後の山々をじっと見据える優希からは、圧倒的な気すら感じられる。

友野は気圧されるようにアクセルを踏み込んだ。
 
 
程なくして、トンネル内の状況を知らせる信号と共に、土樽パーキングエリアの案内も表示された。

他の車が関越トンネルに吸い込まれていく中、道を逸れ、速度を落とし進入する。

エリア内は、トンネル管理用と思しきライトバンが数台とまるだけで、一般客の車はトラックすら見当たらなかった。

友野:
人の姿が無いな…


車を止めて辺りを窺う友野に、優希が叫ぶ。

優希:
友野さんっ、自販機の陰に…っ!


指差す先には、確かに服の裾らしい影があった。

友野:
よし…行こう


優希は小さく頷き、友野と同時に車を降りて自販機に向かって歩き出す。
 
 
 
小屋にも似た建物に入ると、人影の方が先に動いた。

???:
ようこそ…お待ちしていましたよ


友野:
なっ…?!


優希:
ひっ!!


友野が怯み、優希が悲鳴を上げるのにも無理はなかった。

ハロウィンも過ぎたというのに、オレンジ色のカボチャを模した被り物をすっぽり被っていたのだ。

友野:
…何なんだ、その冗談みたいな格好は……


???:
冗談? 何を仰いますか
これが普段の格好ですが何か?


開き直ったというよりは、本当に不思議そうに尋ねてくる。

友野:
いや…それなら、構わないのだが…


すっかり気勢を削がれ、閉口する友野。

だが、

優希:
貴方が…貴方が、勇気をさらったんですか…?


カボチャ頭を見据え…いや、睨みつけて優希は言った。

???:
えぇそうです
それはそうと、ドライブは楽しかったですか?


優希:
そんな事はどうでもいいっ!
勇気を…勇気を返してっ!!


パンプ:
あぁ、自己紹介がまだでしたね
私は巷で「パンプ」と呼ばれております、以後お見知り置きを


どこまでもはぐらかす様な物言いに、優希が吼える。

優希:
私の質問に答えて下さいっ!
勇気はどこに居るんですか!?


パンプ:
勇ましいお嬢さんだ…でも、私との勝負に冷静さは不可欠
少し落ち着かれた方がいい


友野:
優希ちゃん、悔しいけど奴の言う通りだ
冷静になろう、ね?


友野にも言われ、渋々引き下がる。

パンプ:
では、ご質問にお答えしましょう
勇気君には一足先に関越トンネルを越えてもらいました
友野さん、赤城高原サービスエリアは分かりますね?


友野:
もうそんな先まで…


すると、優希は外へ出るべく出口に駆け出した。

しかし…

――ガチャガチャガチャ

優希:
え…な、何で…?!
ドアが開かない…っ!!


パンプ:
ふふふ…この建物のドアは全て封鎖してあります
私を倒す以外に、脱出する手立てはありません


友野:
またえらくご都合主義な展開…


パンプ:
ご説明差し上げたじゃないですか
この空間はいわば「夢」である、とね


優希:
つまり…貴方を倒しさえすれば、私たちはこの悪夢から抜け出せる…そういう事ですね…


パンプ:
悪夢とはひどいですね
友野さんと散々楽しい思いをしてきたくせに


優希:
友野さんは…友野さんは私をずっと気遣って明るく振舞ってくれていただけ…本当は私と同じ気持ち…


友野:
……


優希:
貴方のような…人の心が欠片も感じられない人に語られるべきではありませんっ!


パンプ:
ははは…ひどい言われようだ…


優希:
さあ…戦おうじゃないですか…
こんな悪夢、私が打ち砕いて見せますっ!


パンプ:
意気込みは十分のようですね
では、早速始めさせてもらいましょうか


パンプが手をかざすと、早押しボタンにモニターまで完備されたテーブルが瞬時に現れる。

それを見た友野がつぶやく。

友野:
やはり…「Answer×Answer」だったか…


優希:
え…?


友野:
ゲームセンターにあるオンライン対戦クイズゲームだよ
出題傾向が似てると思ったけど…


まるでささやき声のような独り言に、優希が言葉を返す。

優希:
私、やったことあります…


友野:
…は?


優希:
勇気に連れて行ってもらった時にやらせてもらったんです


友野:
ふむ…


優希:
だから…だから、この勝負私に任せてもらっていいですか?


友野:
もちろんだよ
むしろ、奴が優希ちゃんとの勝負を望んでいるようだし…


振り返れば、そこには二人を見つめるかぼちゃの被り物があった。

パンプ:
友野さんの仰るとおりです
対戦は、私と…優希さん、貴女で行います


優希:
……


指を差されて、文字通り指名された優希は無言で早押しテーブルに着く。

パンプ:
言い残す事は何かありますか?


優希:
言い残す事なんて無いです…


パンプ:
…嫌われたものですねぇ


大げさなモーションで呆れを表現したパンプは、モニターに向き直って話し始める。

パンプ:
簡単にルールを説明します
この勝負は、互いの耐久力で勝負します


友野:
…は?


優希:
つまり、クイズに答えれば相手にダメージを与えられるんですね
そして先に0にした方の勝ち…


パンプ:
ご名答、さすがは理解が早い


友野:
ちょっと待て!


友野が手を挙げて割り込む。

パンプ:
何ですか?


友野:
君と優希ちゃんでは明らかな体力差があるじゃないか
だから、優希ちゃんへのダメージは僕が受けるというのはどうだ


パンプ:
ふむ…構いませんよ


友野:
よし…これでほぼ互角だろう


友野の言葉の後に画面に表示された互いの持ち点は、40点同士だった。

パンプ:
ちなみに、優希さんがそのまま数値化されていたら20点しかありませんでした


優希:
でしょうね…


画面から目を逸らす事無く、優希は答える。

己が不利な状況をも受け入れていたと言わんばかりの落ち着き払った様子に、何故か満足げな態度でパンプは宣言した。

パンプ:
では、始めましょう

 
 
 
――完全ノックアウト制!

馴染みの声でアナウンスが流れた後、いよいよ出題が始まった。

----------------------------------------------
第1問:
これは何と読む?
----------------------------------------------

画面は細かい四角で覆われており、1つずつ徐々に剥がされていく形式で出題された。

青地に白い文字の断片が、少しずつ現れてくる。

すると、

優希:
はいっ!


ほとんど文字にも見えない状況で早押しボタンに手を掛けたのは、優希だった。

優希:
「優越」です!


――ピンポーン!

正解の音とともに、どこから降って湧いたのかボクシンググローブがパンプのボディを捉える。

パンプ:
ぐぅ…っ


見えていた箇所といえば、せいぜい「優」の右下のほんの一部と、しんにょうの端くらいのものだ。

それをいとも容易く正解してしまった。

友野:
(やらせてもらったなんていうレベルじゃない…ほとんど極めてるぞ…)


驚く友野とは対称的に、表情一つ変えず次の出題を待つパンプと優希。

そこは、年齢も性別も超越した戦場になっていた。

----------------------------------------------
第2問:
これは何でしょう?
----------------------------------------------

今度も四角が徐々にはがれていく。

その下に隠されていたのは、何かを写した写真だ。

優希:
っせい!


パンプ:
っ!


ほぼ同時のボタン操作は、どうやら優希のほうが若干早かったようだ。

優希:
「ピザ」!


――ピンポーン!

今度は左のわき腹を捉えられ、軽くよろけるパンプ。

パンプ:
…よく分かりましたね


今度ばかりは感嘆の声を上げるパンプだったが、優希は一切反応しない。

だがそれは予想の範疇だったらしいパンプは再びモニターに視線を落とす。

----------------------------------------------
第3問:
これは何と読む?
----------------------------------------------

画面上には白地に黒い文字があり、何文字か重なってしまっているようだった。

それが徐々にずれていき、読めるようになっていく仕組みらしい。

だが、

優希:
はいっ!


ほぼ出題直後に押していく優希。

画面に映される文字は、ほとんどが重なり合い読めたものではない。

優希:
「切磋琢磨」ですっ!


答えに対して、アナウンスはこう答えた。

――ピンポーン! リーチ!!

友野:
う、嘘だろ…


うめくようにつぶやく友野。

パンプ:
がはっ!


3打目の打撃を受けて派手にうめき、大きく身体を揺らすパンプ。

そして、うろたえる友野にもボロボロのパンプにすら見向きもせず、画面を食い入るように見つめる優希。

もはやそこにいるのは可愛らしい少女ではなく、歴戦の勇士と形容するのが適当であった。

そしてモニターはいずれにも戸惑う事無く、淡々と次の問題を表示するのだった。

----------------------------------------------
第4問:
これは何でしょう?
----------------------------------------------

再びの映像問題の表示の後で画面に現れたのは、モザイクで識別も難しい写真だった。

今度ばかりは手の止まる優希。

だが、パンプの手は止まらなかった。

パンプ:
「こけし」!


答えに対するアナウンスの返事は、

――ブーーー!

何とも冷淡な不正解の音だった。

そしてパンプ側に解答権剥奪を示すエフェクトと、復活までの秒数が8からカウントされ始めた。

7、6、5…

カウントの進む中、写真の映像は滑らかさを取り戻していく。

優希はまだ押そうとしない。

4、3、2、1…

遠目に見る友野でも判別できるほどの粗さで表示される頃、ようやく優希の手が早押しボタンを押し込んだ。

優希:
……「マトリョーシカ」…?


初めて聞く、自信の無さそうな弱々しい声が答えを告げる。
 
 
 
 
 
――ピンポンピンポーン!!
 
 
 
正解を称えるファンファーレと共に、

パンプ:
ぐ…は…ぁっ!!


みぞおちにアッパーカット気味のフルスイングを受けて、吹き飛ばされるパンプ。

しかし狭い室内では大した距離も飛ばぬまま、壁に激突して落ちてくる。

それを待っていたかのように、

――勝者決定!! Congratulation!!

アナウンスが優希の勝利を宣言した。
 
 
 
 
 
目の前のモニターも暗くなり、くず折れるように倒れていたパンプも意識を取り戻す頃、優希はようやく顔を上げた。

友野:
…優希ちゃん


恐る恐る声を掛ける友野に、

優希:
友野さん…私…やりました…


にっこりと微笑を向ける。

友野:
ああ…よくやったよ…


優希:
これで…勇気に…弟に…会えるんですよね……取り戻せるんですよね…


微笑みが少しずつ崩れ、歪んでいく。

友野:
勿論だ、これで山の向こうに抜ければ全部元通りだ


優希:
友野さん…私…わたしぃ……


すがる様に抱きつき、そして…

優希:
…ずっと、ずっと…心配で、怖くて…押しつぶされそうで…でも……勇気を助けるまで…泣かないって…決めてて…


友野:
あぁ…優希ちゃんはお姉さんらしく、立派に振舞ったよ


優希:
ぅ……ふぇ……ふええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ…ん……


静かに嗚咽を漏らすのだった。
 
 
 
その背後から、

パンプ:
おみごと…ですね…


満身創痍を体現しながらパンプが声を掛けてきた。

友野:
お前…


パンプ:
私が気を失っている間に、あなた方を縛っていた空間制御は消えています…


友野:
そうか…


どこか哀れむような声で言う友野。

すると今まで抱きついていた優希が、涙を拭いながら話し掛けた。

優希:
パンプさん…最後に聞かせてください…


パンプ:
何でしょう


優希:
何で…こんな事をしたんですか…


友野:
僕からも聞かせてくれ
下手をすれば警察沙汰な話だ、まさかノープランではやらないだろうしね


パンプ:
…………


優希:
話したくないのならいいです
無理に聞いて何かするつもりはありませんから…


パンプ:
…………


半分は諦めていた優希とは対称的に、友野はなお問い掛けを続ける。

友野:
全て夢の中の出来事だから、許され得る…と言う事か?


パンプ:
…………


友野:
僕は見た目ほど気の長い方ではないのでね…
さっさと答えた方が身のためだぞ


パンプ:
…野蛮な方だ


友野:
何…?


パンプ:
せっかく答える気になったのに、脅迫まがいの言葉を掛けられては口も開きません


友野:
この…っ!


思わず腕を振り上げる。

しかし、それを止めたのは、

優希:
友野さんっ、ダメですっ!


意外にも優希だった。

友野:
優希ちゃん…


優希:
きっと、私たちが今知る必要の無いことなんです
パンプさんは、きっと何かを伝えに来てくれていたんですよ


友野:
…いまいち理解に苦しむなぁ


優希:
私だって、何でこんな目に遭うんだろうって思います…


友野:
だったら…きちんと理由を聞いて、然るべき措置をとるべきじゃないか


友野の言葉に、優希は首を横に振る。

優希:
彼は、私に負ける事で十分な罰を受けています
そんな状態の人を、さらに責める事なんて出来ません…


友野:
だけどねぇ…


なおも食い下がる友野に、優希は言った。

優希:
友野さん、早く勇気を助けに行きましょう
きっと寂しがってますから


その表情は先ほどまでの引き締まったものではなく、いつもの優しさにあふれた笑顔だった。

友野:
…………はぁ
優希ちゃんには敵わないよ、もぅ…


優希:
えへへへ…


友野:
それじゃあ行こうか
ここから40分もあれば着くだろう


優希:
は~~い


友野:
先に行ってて頂戴?
そこの自動販売機で飲み物買って行くから


優希:
わかりましたぁ


小走りに車に戻っていく優希を見届けて、友野は再びパンプを見下ろして言った。

友野:
相手が優希ちゃんでよかったな


パンプ:
全くその通りですね


友野:
僕は君を許したわけじゃない、それだけは覚えておけ…


パンプ:
肝に銘じておきます


器用に背面で硬貨を投入してボタンを押し、取り出し口から清涼飲料水を摘み上げる友野を、パンプは無言で見つめる。

最後に一瞥をくれる視線も受け流し、大きな背中を見送った。

パンプ:
確かに、私はツイてるのかも知れませんね…


小さく言葉を吐く。

パンプ:
あんな清らかな心の持ち主と、戦う事が出来たのですから


そして、パンプはその姿を空間に溶かし、消えた。

Go to Ending Stage ...


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