そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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ニッポンの夏休み!
2008-08-31 Sun 11:00
優希:
わぁぁ…すごくきれい…


勇気:
姉貴…頼むからボートの上で暴れないでくれ…


眼前に広がる深緑の頂は水面に映り、空の青さとあいまって何ともさわやかな風景となっていた。


優希:
ふわぁぁ~…気持ち良かったぁ~~


湖の水上散歩を終えて桟橋まで戻って来た優希は、両腕を伸ばして大きく伸びをする。

勇気:
あの寒さに慣れてると、これでも暑いくらいだけどな


冷静にツッコむ勇気だったが…

服の中まで吹き抜けていくかのような涼風。
来訪を歓迎するかのように降り注ぐ柔らかな日差し。
そして、目にも鮮やかなスカイブルーとビリジアングリーン。

全てが一体となって、夏であることを忘れさせるような清々しさを醸し出していた。



ここは避暑地として有名な場所…から少し奥に入った所にある小さな山村だ。
旅行好きの友野がぶらぶらしているうちに見つけて、度々来るようになったという。
物書きにはうってつけの極めて静かな環境という魅力もあるのだろうが、それだけではない何か魅き付けるものがあるようだ。

友野:
いやぁー来た甲斐があったよ
やっぱり夏休みくらいはそれっぽい所に来ないともったいないからね!


ささら:
そうですねぇ


夏休みを利用して遊びに来ていたささらが笑顔で答える。

優希:
ねぇねぇささらちゃん、あっちも綺麗だよっ
行ってみようよ~


ささら:
そうですね、行ってみましょうか


微笑み返すささらに一度抱き着くと、今度は手を引っ張って行こうとする。
その様子に頭を抱えながら、勇気はささらに囁きかけた。

勇気:
ささら、姉貴の操縦頼むな


ささら:
この湖岸はずっと開けてますから、なるべく離れないようにしますので大丈夫ですよ


勇気:
悪いな、気を使わせて


ささら:
いえいえ、これくらい気を使っているうちに入りませんよ


すると、ささらのセリフを待っていたように友野が口を開く

友野:
勇気君もついていけばいいじゃないか
というより、そんなに良い所なら僕も行きたいんだけど?


優希:
はいっ、み~んなで一緒にいきましょぉ~♪


何か言い出す前に上機嫌な優希の声が割り込んで、多数決により勇気の発言権は無くなった。



10分ほど、ゆっくりと砂地の湖岸を歩いていくと、

勇気:
ほぉ…中々趣のある…


優希:
おっきな門だぁ~


友野:
ははは、あれは鳥居って言うんだよ
確かに神社の門のような役割があるけどね


優希:
ほぇぇ…そうなんですかぁ


大鳥居を見上げた4人は、すぐに奥に延びる道に足を進めた。

しかし、

ささら:
おかしいです…


勇気:
何が?


ささら:
観光地図を頂いたのですけど、この湖の周りに神社があるような事が書かれていなくて…


勇気が覗き込むと、そばにある美術館や博物館、駅や郵便局まで載っているのにこの神社は載っていない。

友野:
まあ観光地図だからねぇ
名所でない平凡な所は載せてないんじゃないかな?


ささら:
なるほど…言われてみればそうですよね


ばつが悪そうに苦笑いを浮かべながら、ささらは地図をしまうのだった。



緩やかな上り坂の参道を5分ほど進むと、先頭を行く優希が声を掛けてきた。

優希:
勇気~、あっちにね、おっきなお家があったよ~


勇気:
そりゃお家じゃなくて神社の本殿だって…
何にせよ、やっと着いたぜ


額を拭う仕草をする勇気の隣で、友野が怪訝そうな顔をして唸っていた。

友野:
それにしても…こんな所に神社があるなんて聞いたことないんだよなぁ…


勇気:
って、さっき自分で「あってもおかしくない」って言ってたじゃないですか


友野:
そうなんだけどねぇ
この町には何度か来てるけど、民宿のおばちゃんも行商のおっちゃんも何も言ってなかったんだよ
こんないい所なのに…


ささら:
やはり…何かいわく付きの場所なのでしょうか


友野:
分からないけど、まあ見てみれば何か手掛かりが掴めるだろう
優希ちゃんも…


そう言って3人が境内の方を見遣ると、そこに優希の姿はなかった。

勇気:
うぁっ!?
あ、姉貴っ!?


友野:
あらら、建物の陰に行っちゃったかな


ささら:
ゆうさん、私はあちらを…


言いかけるささらが振り向くと、そこに居たはずの勇気の姿は既になく、

勇気:
ささらは広い方を頼む!
俺は森の方見てくるから!!


十数メートル先から、勇気の怒鳴り声が掛かる。
そんなやり取りを眺めていた友野は、苦笑混じりにこう言うのだった。

友野:
やれやれ…優希ちゃんの事となると人が変わったようになるだもんなぁ


ささら:
今までのお二人の境遇を考えれば、ごく普通の事にも思えますけど…


友野:
まあそうなんだけどねぇ~
さてさて、僕らも探しに行こうかな
後で勇気君にどやされるのは勘弁願いたい所だしね


そう言うと、歩き始めていたささらに続く友野だった。



程なくして、優希を見つけたのはささら達だった。
安堵のため息をついたささらが声を掛ける。

ささら:
ゆきちゃ~ん、ゆうさんが心ぱ…


が、言いかけて止める。
不思議に思って友野が声を掛けようとするが、こちらも口が止まる。

何やら神妙な面持ちで食い入るように何かを見つめる優希。
その視線の先にあったのは、

――シャララン、シャララン…

錫杖の鳴る音と共に舞台を舞う一人の巫女装束の女性。
その踊りはただ優雅で、かつ力強い。
3人を黙らせるには十分過ぎる神々しさを放っていた。

すると3人の熱視線を感じたのらしく、頬を真っ赤にして恥ずかしそうに話し掛けて来た。

女性:
み、皆さんいつの間に…


ささら:
あ、あの…お取り込み中の所失礼しました
あまりに素敵な舞いだったのでつい見入ってしまって…


友野:
いやぁ素晴らしいっ!
こんな山奥に…いや、山奥だからこその伝統芸能なんだなぁ


女性:
い、いやですわ…そんな…恥ずかしい…


縮こまって言う女性。

そこに、

優希:
お姉さん、すごくきれいでしたよっ
だって、お姉さんの周りで赤い鳥さんも一緒に踊ってたんだもん
もっともっと綺麗に見えますよね~♪


いつものように気持ちをストレートに表現する優希。
しかし、その言葉に押し黙る一同。
ただ一人沈黙の意味が分からず、しかし真似で笑顔のまま優希も倣って黙る。

女性:
お嬢さんは…鳳凰様が見えてらしたのですか…?


優希:
ぇ…?
ほーおーさま?


友野:
えっとね、尾羽根が長い鳥で、翼を含めた羽根全体が火のように赤く揺らめいていると言われているんだ。
神様が地上に降りる時にこの姿をとるとも言われる…まあ、空想の産物なんだけど…


友野の解説を聞いた優希の反応は、

優希:
はいっ、友野さんが言った通りの鳥さんでしたよ?


さすがにこれだけ盛大に驚かれると不安らしく疑問形だった。
それは友野もささらも同じで、心配そうに優希を見つめる。

すると女性が厳かな雰囲気を漂わせながら語り始めた。

女性(桃花):
この神社は古来より鳳凰様をお祀りしております。
私、当神社で巫女を務めております「桃花(とうか)」と申します。

こちらでは巫女が舞いを奉納し、日々の平安に感謝するというしきたりがあるのです。
特に夏は御霊の送り迎えもあるので、月に2回、麓の舞台で舞うのですが…
私、初めて大役を仰せ付かって…上手く舞う自信がありませんでしたので…


友野:
つまり、本番前のリハーサルをやっていたという訳ですか


桃花:
左様でございます…お恥ずかしい限りですが…


顔を真っ赤にしながら畏まって言う女性。

すると、

優希:
とーかさんすごく綺麗だったですっ!!
踊りが上手か下手か、私には分からないけど…
でも、私も、友野さんも、ささらちゃんだって見入っちゃうくらい綺麗だったんだもん、下手なはずがないですよ!!


真剣な眼差しで見つめ、一際大きな声で言う優希。
その力の籠った言葉に圧されるようにささらも口を開く。

ささら:
私もそう思います
桃花さんの舞いを拙いと言うのは、上辺だけを見る人の悪い見方です
技術よりも、気持ちが大切なのではないでしょうか


友野:
二人の言う通りですね
少なくとも僕には下手には見えなかった
そこいらのブレイクダンサーどもに見せてやりたい程だ!


拳を握って力説する友野に、

優希:
あ、この前のテレビの人達ですよね?
勇気が下手すぎるって怒ってましたよぉ


優希が合いの手を入れるので友野も勢いのまま続ける。

友野:
だよね!?だよねぇっ!?
あんな鈍臭いダンスでテレビなんか出てくるなって言いたくなるよホントに…


そんなやり取りを見ていた女性は、最初こそキョトンとした表情だったが、次第に和らいでいく。

桃花:
ふふ…ありがとうございます
皆さんのお陰で少し自信が湧いてきました


友野:
ぉ、それは良かった
まあ貴女なら上手く行く事間違いなしだ
何しろ、ウチのお姫様二人が太鼓判を押してるんですからねぇ


桃花:
そうですね…
お二人とも、ありがとうございますね


笑顔を向けられて照れる優希とささらであった。

桃花:
もし宜しければ、今夜麓の舞台に見に来て下さい
皆さんがいらっしゃれば百人力です


優希:
はいっ!
絶対に応援に行きますねっ、とーかさんっ!




その日の夕暮れ。
神社の舞台には村中の人々が集まって、開演を今や遅しと待っていた。

優希:
いよいよだねぇ~…


ささら:
そうですねぇ…
ほら、ゆうさんも前に来て下さいよ


勇気:
んな事言ったって…こういう人込みは苦手なんだよ…


ちなみに勇気は、3人が桃花と別れてから程なくして、森から出て来た所で無事合流したのだ。

結局ささらと優希に手を引かれ、二人に挟まれるように座らせれる羽目になる。

勇気:
まあ…いいか…


優希:
ほぇ?何が?


勇気:
何でもないよ
ホレ、もう始まるみたいだぞ


勇気に言われて姿勢を正す優希のモーションが終わるのとほぼ同時に、舞台の幕が引かれる。
その奥から、無垢な巫女装束を纏った桃花が舞台に進み出る。
その足取りは昼間優希が見た頼りないものではなく、一歩一歩を踏み締めるような力強いものだった。

4人の姿を見つけたらしく、視線が合った瞬間に微笑を見せた。
そして、高々と振りかざす錫杖の音が二度三度鳴り響き、舞いが始まった。

優希:
とーかさん、きれいだなぁ…


優希がまたまた呆けたような顔で見とれる。

勇気:
そうだな…まるで…


優希:
まるで?


勇気:
いや……何でもない


普段の優希なら幼子のように問い詰めていただろう。
だが今日は、勇気の表情から何かを察したらしく、それ以上突っ込む事はしなかった。
もしくは、舞台に気を取られただけかもしれないが。

ささら:
(ゆうさん…)


ささらも気付いたようだったが、こちらも言葉にすることは無かった。

その直後、

優希:
…あっ!


勇気:
お…あれは…


双子が同時に濃紺の夜空を見上げた。

そこには、恐らく双子にしか見えない鳳凰の舞いが見られたのだろう。

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