そこは雪の止むことのない純白の街。 ようやく辿り着いた安息の地に、無数のきらめきが舞い降りる…
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お昼休みはウキウキウォッチン☆
2008-11-03 Mon 11:20
勇気:
何と言うか、やっぱすげぇ違和感あるよな…


渋い顔で言う勇気に、

優希:
向こうに居た頃はもうちょっと夏休みあったもんねぇ


苦笑いで返す優希。
2学期が始まって2ヶ月半、休みボケもすっかり抜けていた。



勇気が愚痴るのは夏休みの短さの事である。
通常7月下旬から8月いっぱいまでの約6週間を夏休みと言うが、この街に「暑い」という概念が存在しないため極端に短い期間になるのだ。
具体的には、お盆と前後1週間の合わせて3週間しかない。

勇気:
まあ、寒い地域の恒例だな…


優希:
でもでも、冬休みはいっぱいあるからいいよね♪


優希の言う通りで、冬休みは夏休みの代替えとばかりに、通常の学校より3週間長い。

勇気:
逆にそうでなかったとしたら暴動が起こるぞ?


優希:
あ、あははは…


時間は昼休み。
双子はいつものようにひとつの机を二人で使って、勇気特製弁当をつついていた。

優希:
んん~~~…ミートボールおいひぃ~~♪


勇気:
姉貴…口に物入れながら喋んなって言ってるだろ


優希:
はぅ…ごめんなさぁい…


周囲はがらんとしている。
それもそのはずで、この学校には学食があり、初等部のちびっこも高等部の子達と並んで食べているほどだ。
そもそも、これだけ寒いと弁当が凍る可能性すらあるので、地元の子達は余程イベントでもない限り持ってくる事はない。

優希:
ねぇ勇気~
学食ってそんなにおいしいのかなぁ


勇気:
さあなぁ…
俺が作っちまうからまともに食った事ないもんな


優希:
私、勇気のお弁当大好きだよ!
毎日いっしょうけんめい作ってくれるんだもんっ


勇気:
はは、そりゃどーも


半笑いで答える勇気だが、まんざらでもなさそうだった。

勇気:
で、姉貴は学食行ってみたいのか?


優希:
うんっ、行ってみたい!


勇気:
そか、んじゃまあ明日行ってみるか


勇気は、ここで優希が飛び跳ねて喜ぶものだと思っていた。
しかし続くリアクションは意外なものだった。

優希:
はぅ…ワガママ言ってごめんね、勇気…


勇気:
構わねぇよ
カネもだいぶ余らせてるし、たまには朝も楽したいしな


優希:
ううん、そうじゃないの


勇気:
ん?


優希:
いつも私のために心のこもった料理を作ってくれてるのに、他所で食べたいとか言って…
えとね、うまく言えないけど…
勇気の気持ちも考えないで、ただ行ってみたいだけでこんな事言っちゃって…


言葉を重ねるほどにどんどん俯いていく優希の頭をぽんぽんと軽く叩きながら、勇気は言った。

勇気:
また止まらなくなるぞ
言いたいことは分かった、とりあえず気にするな


優希:
ぅ、うん…


何とも複雑な表情のまま頷く優希であった。



その日の夕方。
優希を図書室で待たせて――厳密には本を取りに行く振りをして抜けてきたのだが――勇気がやってきたのは学食だった。

勇気:
なるほど…
で、ここでこうなって…あーなって…


放課後の、部活動真っ最中の時間で人気はほとんど無い広間の隅にあって、ひとり唸る。

勇気:
時間帯は…まあこんなもんだろうな…
姉貴の食う早さが…


メモを眺めながらさらにブツブツと呟く。
どうやら明日に控えた学食利用の下調べのようだ。

勇気:
まあこんなモンか
あとは明日の天気次第だな


納得がいったようで、頷きながら窓の外を窺う。
外は予報通りの雪が舞っていて、しばらく止みそうにない雰囲気だった。



そして翌日。
天気はいつも通りの雪模様。

――キーンコーン…

4時限目終了のチャイムが鳴り始めるや否や、勇気は優希の手を掴み、

勇気:
姉貴、走れ!


優希:
ふぇ…?
わ、わわっ!ふみゃぁぁぁぁぁ…!?


猛烈なダッシュに巻き込まれた優希が間抜けな悲鳴を上げる。
その速さは小柄な優希の身体を浮き上がらせる程で、常連の生徒達を相手にわずか100m強のコースで10m以上の差をつけた。
もちろん勇気は、浮き上がった優希を器用に抱き留めて走り続けたのだった。

勇気:
ぜーっはーっぜーっはー…おし、予定通りだ…っ!


優希:
ふわぁ…広いなぁ…


授業をサボってきたらしい高等部の生徒くらいしかおらず、しかし昼食時の芳しい匂いがたちこめる広大な室内を見渡して、感嘆の声を上げる。

すると、

勇気:
姉貴、あっちだ


勇気が指差すの、は食券売り場に佇む壮年の女性の方だった。

優希:
あ、うん!


優希は勇気に手を引かれてトテトテと駆けていく。
そして、品目がそんなに多いわけではないメニューとにらめっこすること3分、ようやく食券を獲得したのだった。
ちなみに、この3分という時間も勇気の予定に織り込み済みだったりする。

おばちゃん:
あいよ、Bランチね


優希:
わぁい、おばちゃんありがとぉ~♪


トレーに載せられた大小5つの器には優希の大好きなものばかりが入っていて、目を輝かせて喜びを表していた。



すると、

勇気:
姉貴、あっちに席取ってあるから行こう


優希:
うんっ!
おばちゃん、またね~~


おばちゃん:
あいよ~


勇気が案内したのは、窓際の特等席だった。
年中雪のこの街では窓際は寒い場所として敬遠されるのだが、双子にはあまり関係ない事である。
ちなみに、晴れの日はこの席を巡る壮絶な争奪戦が繰り広げられるのだ。

優希:
ふわぁぁ…
すっごくいい景色ぃ…


勇気:
ちゃんと窓際用の暖房付いてるから普通に居られるんだが、何故か不人気なんだとさ


優希:
へぇ~…


一応返事はする優希だが、すっかり景色に目を奪われていて上の空だった。
それもそのはずで、町役場最上階にある町民食堂の次に景色が良いと街でも有名な場所なのだ。
滅多に日が射さないものの、南向きの大開口から見渡す180度の大パノラマは、まさに圧巻のひと言である。

勇気:
ほら、早く食べないと全部冷めるぞ


優希:
あ、うん!
いただきまぁ~す♪


律義に手を合わせてようやくの昼食タイムとなった。

優希:
はぅ~~、おいし~~ぃ♪


勇気:
ん…なかなか…
さすがベテランの技だな…


今時珍しい、出来合いの惣菜が一切無い全て手作りのランチセットに、勇気も唸る。

優希:
あとねぇ~…えへへ、これも持って来ちゃった


優希がポケットから取り出した物を見て、

勇気:
あぁっ!
最後の1つどっか消えたと思ったらっ!


勇気に大声を上げさせたそれは、ふりかけの小袋だった。

優希:
せっかくあったかいご飯食べられるんだもん♪
勇気と、半分こだよ~


そう言って、勇気の茶碗にさらさらと振りかけて、自分の茶碗にもかけようとする。
しかし出てきたのはほんのわずかで、明らかに勇気の方が多かった。

優希:
ぁぅ……


勇気:
ほら…


すかさず茶碗をすり替える勇気であった。



勇気:
はーー食った食った~


優希:
おなかいっぱいだよぉ


およそ20分後、全ての器を空にした双子が揃って腹をさする。

勇気:
ここまで量があるとは思わなかったな…
姉貴、俺が寝たらノートよろしく


優希:
ふぇ!?だ、だめだよぉ!
私だって絶対寝ちゃうよ~


勇気:
言ってみただけだって
姉貴が寝るのは目に見えてるからな…


優希:
むぅ~~、私そんなにお寝坊さんじゃないもん!


勇気:
そう言いつつ、おとといも完璧に寝てたような…?


優希:
あぅあぅあぅ…


口を押さえにかかる優希を軽々と避ける勇気。
その瞳は、視界の隅に不穏な影を見つけていた。
しかしこの事態も、勇気の予定には織り込み済みだった。

勇気:
さて、そろそろ戻るか~
マジで眠くなってきた


優希:
あぅ…
そっか、眠いんじゃ仕方ないよね…


未練たらたらな口調ながら、勇気に倣って席を立つ優希。

勇気:
ふぁぁぁぁ…眠ぃ…


優希:
だ、大丈夫?


心配そうに歩み寄る優希。
しかし、これらは全て勇気の計算の下に出来上がっていたシナリオ通りだったのである。


僅か2分後。
学校内で非常に有名な不良グループがやってくる。
空腹に加え毎日のように食堂のおばちゃんに諭されるのがよっぽど気に食わないらしく、この時間はいつも不機嫌極まりないのだ。



亜緒衣:
え…あの席で…ですか?


優希:
うんっ!
すっご~く景色良かったよぉ


顔色を変える亜緒衣と対称的に、興奮覚めやらぬ様子の優希。

亜緒衣:
後で、ちゃんとゆうさんにお礼を言っておいた方がいいですよ


優希:
そうだよねぇ~
ホントに自慢の弟だよぉ


言わんとする事を全く分かって無い様子の優希に、亜緒衣は半ば諦めたような笑顔を向けるのだった。

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